『食』に関して
天照大御神のお言葉がけっこうあります。
1- 5
ヨネトミヅ | カマニカシグ | 米と | 釜に炊ぐは |
ヒカシラヤ | ニヱバナミナ | 火頭や | 丹色花南 |
ニヱシツム | ヱカヒトタビノ | 煮ゑ沈む | 枝日一度の |
ミケハコレ | フルトシフヨリ | 御食はこれ | 古年経より |
ツキミケノ | ヒトハフソヨロ | 月六食の | 人は二十万 |
イマノヨハ | タダフヨロトシ | 今の世は | ただ二万年 |
イキナルル | ミケカサナレバ | 生き慣るる | 御食重なれば |
≪訳≫
お米と水をお釜に入れて炊く時に、初めはぼうぼうと火頭が釜を包むほど火を強くしますね。煮え立って、煮え花がなみなみ(ミナミ)と立ってくると火を弱めます。そして水気が少なくなってだんだんと煮え沈むのです。何事もなく平和な時には一日一回ご飯を炊いて食べますが、これも東西南北の名の元になっているのです。大昔には二回だったのが、一と月に三回の米飯をするようになると、人の寿命は百万才になり、一と月に六回米飯を取るようになって二十萬年の寿命になりました。そして今の世は一日一回米飯の食事を取るので、二萬年しか生きられなくなってしまったのです。美味しいからと食欲に任せて、米飯ばかりしていると長生きすることが出来ません。
ホツマツタヱを述ぶ (現代語訳 今村聰夫)より
1- 6
ヨワヒナシ | ユエニヲンカミ | 齢なし | 故に御神 |
ツキニミケ | ニガキアホナヤ | 月に三食 | 苦き青菜や |
≪訳≫
だから天神(あまかみ)になるような人は、一と月に三回の米飯を心掛けて、その上チヨミ草という苦菜の葉や穂を食べるのです。そうすればお日様が南に達したときのように、またご飯が煮え立ったときのように、いつも快活に生きる事が出来るのです。そして天(ア)の精気を受けて長生きする事が出来ます。
ホツマツタヱを述ぶ (現代語訳 今村聰夫)より
9-21
タミノカテ | ケシシユルセバ | 民の糧 | 獣肉許せば |
コヱツノリ | ミナハヤカレス | 肥ゑ募り | みな早枯れす |
≪訳≫
民の食料として、獣の肉を食べることを許したところ、民は大変太って、多くの民が早死にしてしまった。
15- 3
カンカタチ | ケノシシハメバ | 神形 | 獣の肉食めば |
シムケガレ | ヨツナルシシハ | シム穢れ | 四音なる肉は |
ナホスギテ | チヂミケガレテ | ナホ過ぎて | 縮み穢れて |
ミモカルル | タトエバニゴル | 身も枯るる | 例えば濁る |
ミツカワク | シシモニゴレバ | 水乾く | 肉も濁れば |
カハキツク | キヨナオハメバ | 乾き付く | 清菜お食めば |
15- 4
チモキヨク | ウシホノゴトシ | 血も清く | ウシホの如し |
ヨヨタモツ | アメノウムタミ | 代々保つ | 天の生む民 |
コノゴトク | ナガイキミント | この如く | 長生きみんと |
クヒモノノ | ヨシアシワクル | 食ひ物の | 良し悪し分くる |
≪訳(15- 3,4)≫
それでは清く正しく美しいカンカタチ(神形)を保ち、健康で長生きするスガカテ(健康食・清食)の話しをしましょう。
何よりも忌(い)むべきは獣肉や鳥を食べることです。もし人がケシシ(毛の生えた獣)の肉を嗜(たしな)むと己の血や肉も汚れて、たとえ一時は精が付いた様でも実は動物の悪い精が付き過ぎ筋肉が固く凝(こ)り縮み毛も抜け落ちて病となり苦しんで早死にします。例えれば、濁水が乾くと後に汚泥(おでい)がこわばり付く様に、獣肉も食べると動物の汚れた血が全身にへばりつき己の血も汚れて健康を害しついには病に倒れます。
常日頃、新鮮な野菜をたくさん食べなさい。野菜を食べれば、病に弱って黒く濁った血も再び赤く透き通った太陽の輝きを取り戻し、ここ二見の浦の御潮(みしお)の様に力強い生命を宿します。
私は常々、臣も民をも分け隔て無く、天から授かった我が子の様に慈しみ、皆がいつまでも豊かで健康に長生きするよう祈ってきました。
今こそ、人が健康で天寿を全うする為に食物の良し悪しを見分ける知識をはっきりと持たなくてはなりません。
15- 15
モロタミモ | ヨクキケツネノ | 諸民も | 良く聞け常の |
クイモノハ | ソロハサイワヒ | 食物は | 稲は幸ひ |
15- 16
ウロコイオ | ツギナリトリハ | 鱗 魚 | 次なり 鳥は |
ホガカチテ | ホトンドマカル | 火が勝ちて | 殆んど死る |
トモシビノ | カキタテアブラ | 灯の | 掻き立て油 |
ヘルゴトク | ホカチイノチノ | 減る如く | 火勝ち命の |
アブラヘル | アヤマリミテノ | 油 減る | 誤り三声の |
シシハメバ | シシコリチチミ | 肉食めば | 肉凝り縮み |
ソラコヱテ | ミノアブラヘリ | 空肥ゑて | 身の油 減り |
ケモカレテ | ヤガテマカルゾ | 気も枯れて | やがて死るぞ |
15- 17
フツキナカ | ススシロクエヨ | 二月中 | 大根食えよ |
フテシシハ | クエバイキテモ | 二声肉は | 食えば生きても |
クサリクサ | カミトナカタヱ | 腐り臭 | 神と仲絶ゑ |
イミコヤニ | ミトセススシロ | 忌み小屋に | 三年ススシロ |
シラヒゲモ | ハジカミハミテ | シラヒゲも | ハジカミ食みて |
アカソソゲ | ヤヤヒトトナル | 垢濯げ | やや人となる |
スワノカミ | シナノハサムク | スワの神 | シナノは寒く |
トリシシニ | サムサシノグト | 鳥肉に | 寒さ凌ぐと |
15- 18
コフユエニ | ナホアラタメテ | 乞ふゆゑに | なほ改めて |
アイモノノ | ウオハヨソアリ | アイモノの | 魚は四十あり |
コレモミカ | ススナニケセヨ | これも三日 | スス菜に消せよ |
ミヅトリオ | クヘバフソヒカ | 水鳥お | 食へば二十二日 |
ススナヱヨ | ヨノトリケモノ | スス菜得よ | 世の鳥獣 |
イマシメト | アマネクフレシ | 戒め」と | 普く布れし |
アヤマラバ | タトエイノチハ | 誤らば | たとえ命は |
オシマネド | チケカレユエニ | 惜しまねど | 血穢れゆえに |
15- 19
タマノヲモ | ミタレテモトニ | 魂の緒も | 乱れて本に |
カエラネバ | タマシヰマヨヒ | 返らねば | 魂 迷ひ |
クルシミテ | ケモノノタネオ | 苦しみて | 獣の種お |
アイモトム | トリモケモノモ | 相求む | 鳥も獣も |
ツキヒナシ | ソロハツキヒノ | 月日無し | ソロは月日の |
ウルナミゾ | ユヱニコタフル | ウルナミぞ | ゆゑに応ふる |
ヒトハモト | ナカゴココロバ | 人はもと | ナカゴ・こころば |
ヒツキナリ | スグニマカレバ | 日月なり | すぐに死れば |
15- 20
アヒコタエ | アメノミヤヰニ | アヒこたえ | 天の宮居に |
カエサント | ケモノニナルオ | 帰さんと | 獣になるお |
トトムナリ | ワガツネノミケ | 止むなり | 我が常の御食 |
チヨミクサ | ヨノニガナヨリ | チヨミ草 | 世の苦菜より |
モモニガシ | ニガナノミケニ | 百々苦し | 苦菜の御食に |
ナガラエテ | タミユタカニト | 長らえて | 民豊かにと |
クニヲサム | ワレミルススキ | 国治む | われ見るススキ |
チヱヨタビ | ワガミモコトシ | 千枝四度 | わが身も今年 |
15- 21
フソヨヨロ | ヰマダサカリノ | 二十四万 | ゐまだ盛りの |
カキツバタ | ノチモモヨロオ | カキツバタ | 後百万お |
フルモシル | 経るも知る |
≪訳(15- 15,16,17,18,19,20,21)≫
「モロタミ(諸民)もしかと聞きなさい。日常の食物で最も優れ物はゾロ(米・ぞろぞろ、ぞろ目、ぞろっと等、揃うの語源)が一番です。太陽と月の精を一杯含んだ幸い多き食べ物です。二番目に良いのが鱗(うろこ)の有る魚で、三番目は鳥ですが鳥はホ(火)が勝ち過ぎて、人は力が付くと思い込んでいるがこれは大間違い、不幸にも鳥をたくさん食べたほとんどの人は遅かれ早かれ病となり死んでゆく。灯火(ともしび)の火をもっと明るくしようとむやみに灯心を掻き立てて油が減るのと同じように、我が身の油を早く使い切ってかえって命を縮めてしまう。
最も恐るべきはミテ(三字・璽)の獣を食べる事です。食べたとたん己の血肉が凝(こ)って縮み、身の油を減らしながら空肥(からぶとり)して頭の毛も脱け落ちやがて早死にするぞ。やむないこんな緊急時には、二ヶ月半の間イミヤ(忌小屋、酒肉を禁じ沐浴する室)に籠(こも)ってスズシロ(大根の別称)を大量に食べよ。いわんやフテ(二字・璽)の獣を食べた者は、たとえ生きたとてその臭さは腐る屍(しかばね)同然、これを生き腐れの毛枯れ(けがれ、汚れの語源)と言うのだ。この者は神の恵みも断たれて救い難く、三年間イミヤに入れスズシロ(大根)を大量に食べさせて体毒を消し、薬にシラヒゲ(白髭、芹・せり)とハジカミ(しょうが又は山椒・さんしょう)を与えて徹底して身の不浄な垢(あか)を濯(そそ)げよ。やっとまともな人に戻るのだ。」
「つい昨日の事だが、たまたまスワの神(現・諏訪大社祭神、建御名方・たけみなかた、長野)が山深き国からはるばるやって来て願い出るには、
「シナノ(信濃・長野)は大層寒く魚も多く取れません。特に雪が深い厳しい冬は、民はやむなく魚の代わりに鳥獣の肉を食べて寒さを凌(しの)いでいます。どうか食べ物の乏しい冬場だけでも肉食をお許し下さい。」
私はスワの神に厳しく申しつけました。
「ならぬ。その間違った考えを改めなさい。アイモノに四十種も魚があるではないか(あいもの、四十物、塩又は乾魚の語源)。魚を食べよ。これとて食後三日の間はスズナ(菘・蕪 かぶ)を食べ良く身の毒を消すのだ。もし誤って水鳥を食べた者は二十一日間スズナを食べ身の汚れを祓えよ。今この場で世の鳥獣食を固く戒(いまし)め禁止する。すぐに掟(おきて)を厳しく改め、天下あまねく法(のり)を触れよ。」
「たとえ間違いで鳥獣を食べ、「自分は人間の屑だから、こんな命なんか惜しくもない」とうそぶいたとて、その者の血は確実に獣の血に汚染されて肉体も既(すで)に腐って死んだも同然だ。獣の悪い霊を受けてタマノオ(魂緒、人の魂(タマ)と魄(シイ肉体)を結ぶ命の緒)が乱れると魂魄(たましい)も共に乱れ、苦しんだ後に死した者の霊は天上サゴクシロ(精奇城)の元宮(死者の霊が帰る大元宮)に帰れぬぞ。恐ろしい事に天国に帰れぬ者の魂魄(たましい)は巷(ちまた)に迷い、浮かぶ瀬もなく彷徨(さまよ)ったあげくの果てに安易な獣の霊と求め合い、ついに人間界を離れて獣の世界へ消えて来世は獣に生れるぞ。鳥や獣は四化元素で生じただけで一化元素が足りず、ヒウル(日精)もツキナミ(月霊)も無く動物界に落ちると二度と人に戻れぬぞ。」
「人は古来より米を何より大事に育てていただき(食べ)命の糧(かて)にしてきました。 ここではっきり答えよう。
人は獣と違って空、風、火、水、土、の五化元素が化成して生じた故に、特別に日月の精霊を受けてナカゴ・ココロバ(心意)を有して生れます。これゆえ、一生を素直に生き、己の本分を良く守って努力し、人の模範となり死を迎えた人は、特に天神の神意に良く適(かな)い、神はこの者が獣の世界に迷い込まぬ様に天の元宮に帰るまで見守り導いてくれます。
我が日常の御食(ミケ)には、誰も食べようとしない特別のチヨミ草(千代見草、不老長寿の仙薬)があります。この菜は世人の言う苦菜(にがな)より百倍も苦い食物です。私はこの千代見草の食事のお陰で他の人よりも長生きして、今日まで民が健康で豊かにあれと祈りつつ生きてきました。私は既にチエ(千枝)のスズキ(鈴木、天真榊・アメノマサカキ・六万年目に千枝(チエ)となり枯れる古代暦)が四度枯れて変わるのを見届けて来ました。(60,000年 × 4度 =240,000年)
我が身も今年二十四万歳になるが、今だ盛りの杜若(かきつばた)の様に壮健で美しく生きています。これから先まだ百万年後も私は長生きして国民の行く末を見守るでしょう。」
15- 23
ミコウミテ | ニシノハハカミ | 御子生みて | 西王母 |
マタキタリ | コロヤマモトハ | 又来り | 「崑崙山麓は |
オロカニテ | シシアヂタシミ | 愚かにて | 獣肉味嗜み |
ハヤカレシ | モモヤフモモゾ | 早枯れし | 百や二百歳ぞ |
タマユウニ | チヨロアレドモ | たまゆうに | 千万(歳)あれども |
ヒヒノシシ | シナキミイデテ | 日日の肉食 | シナキミ出でて |
チヨミグサ | タヅヌトナゲク | 千代見草 | 探づぬ」と嘆く |
≪訳≫
西の母上(西王母)が、遠路はるばる中国河南省から、日本の日高見国(仙台多賀地方)まで、再びやってきました。「ころやまもと」(崑崙山本)の国民は愚かにも肉食で(肉の味を嗜む)、その結果、皆、早死にしており、百才とか二百才でしかありません。
なかにはごく僅かですが、千とか万とか生き延びる神もいますが日々、肉食を続けています。
夏(か)の国では、支那の君が現われて、不老長寿の(ホウライの国の)千代見草を探し求めていましたが見つからないと嘆いています。
※西王母(せいおうぼ)
中国で古くから信仰された女神で、崑崙山(こんろんざん)に住み、神仙思想と結びついて「不老不死の支配者」。
その西王母が、ホツマツタヱではニシノハハカミとして登場する。
15- 24
ミソギセシ | ナガラフミチオ | みそぎせし | 長らふミチお |
ヨロコベバ | カレオナゲキテ | 喜べば | 枯れお嘆きて |
ミチサヅク | オモエイノチハ | ミチ授く | 思え命は |
ミノタカラ | コトワザモナセ | 身の宝 | 諺もせな |
ヨロキミモ | ヒトリイノチノ | 万君も | ひとり命の |
カハリナシ | トキキヌカレハ | かはり無し | 時来ぬ枯れは |
クルシミテ | タマノヲミタレ | 苦しみて | 魂の緒乱れ |
アニカエス | ヨアヒタモチテ | 天に帰す | 齢 保ちて |
≪訳≫
思え命は身の宝 万君(ヨロキミ)も 一人命の 変りなし
(考えても見よ、人の命こそ己が身の宝です。たとえ万人の君主の為といえども、唯一人命を代われる者はないのだ。)
「たとえば、己は人生を十分楽しんだからもう何時(いつ)死んでもいいと言って、天から与えられた命を真っ当に生きず天命を待たずに身勝手な早死にをすれば、いずれタマノオ(魂緒)が乱れ苦しんで天の元宮にも帰られず獣に落ちるのだ。よわい(天寿)を大切に保ち美しく年老い召されるまま天に帰る時は苦しみも無く楽しんで死を迎えるだろう。
出典(株式会社 日本翻訳センター URL:http://www.jtc.co.jp URL:http://www.hotsuma.gr.jp)
15- 25
アニアガル | トキハタノシミ | 天にあがる | 時は楽しみ |
マカルトキ | コレココナシノ | 死るなり | これココナシの |
トキマチテ | カルルニホヒモ | 時まちて | 枯るる匂ひも |
ヒトノミモ | スガカテハミテ | 人の身も | 清糧食みて |
ヨロホヱテ | カカルニホイモ | 万歳得て | かるる匂いも |
ココナシゾ | オモムロスグニ | ココナシぞ | 屍すぐに |
カンカタチ | ガシシハクサク | 神形 | 悪肉は臭く |
ヲモミタレ | トクハアラヒミ | 緒も乱れ | トクハアラヒミ |
≪訳≫
これココナシ(菊)の花は、冬を静かに待って自然に枯れ行く日まで香わしく匂い続ける様に、人の身も同じくケシシ(獣肉)を食べず我が説くスガカテ(健康食、清食)を守って食べればヨロホ(万歳)の寿命を得て夢見る様に楽しく生き、死に際にはココナシ(菊花)の香しい匂いに包まれ神に迎えられよう。菊花の如く清く正しく美しく生きた者のなきがら(亡骸)はすでにカンカタチ(神体)であり、宮に安置した御霊(みたま)は菊香と共に昇華して天に送られよう。(古代約3000年前、仏教渡来以前は宮(やしろ)が葬祭場でもあった。)
これに反し汚肉(ガシシ)を食べた者は腐る屍の如く臭く魂の緒も乱れ、もはや邪食を絶つにはアライミ(潔斎、けっさい)をして心身を清めるのみなり。
出典(株式会社 日本翻訳センター URL:http://www.jtc.co.jp URL:http://www.hotsuma.gr.jp)
32-10
ヤヨヒナカ | ハラミヤマヘト | 三月中日 | ハラミ山えと |
ミユキナル | ソノミチナリテ | 御幸なる | その道なりて |
クロタヨリ | カグヤマカモヤ | クロタより | カグ山カモや |
タガノミヤ | スハサカオリノ | タガの宮 | スハ・サカオリの |
タケヒテル | ミアエシテマツ | タケヒテル | 御饗えして待つ |
ヤマノボリ | クダルスバシリ | 山登り | 下るスバシリ |
スソメグリ | ムメオオミヤニ | 裾めぐり | ムメ大宮に |
32-11
イリヰマス | カスガモフサク | 入り居ます | カスガ奏さく |
ミネニヱル | ミハノアヤクサ | 峯に得る | ミハの霊草 |
チヨミカヤ | モロクワントテ | 千代見草かや | 諸食わんとて |
ニテニガシ | タレモヱクワズ | 煮て苦し | 誰も得食わず |
≪訳≫
三月半ばいよいよ念願のハラミ山登山を決意して行幸(みゆき)されました。事前にお触れが発せられて、その行く道の整備もすでに完成しています。その行程は先ず、クロダの宮から御輿に乗ってカグヤマを目指して進み、カシオの神武天皇(カンヤマトイワワレヒコ)の陵(みささぎ)にお参りして後、山城(ヤマシロ・京都)の鴨神社に向かい、ここで天孫ニニキネと御祖天皇(みおやあまきみ・ウガヤフキアワセズ)の社に詣でた後、国の開拓神を祭る淡海(オウミ)の多賀神社に、にぎてを捧げました。木曽路を抜けてスワに行き、甲斐のサカオリ宮に入られました。
ここでは、タケヒテルが盛大な御饗(みあえ)を用意してお迎えいたしました。
早速、あくる日から高齢をおして登山に挑み、遂に山頂に立たれた君は、お鉢巡りもされて大八州(おおやしま)を巡り見、生涯一度の念願を果たされ感慨無量の様子でした。
下山はスバシリ口を一気に降りて、裾野を南回りに巡って梅大宮(ムメオオミヤ、現・浅間神社)にお着きになりました。宮でお待ちしていたカスガ親王(おきみ)は、君が旅の疲れをいやす間もなく、
「今度、山の峰で採ったこの御衣(ミハ)の綾草(アヤクサ)が、本当に千代見草でしょうか」と、聞きました。そこで、諸神が早速煮て食べようと試みましたが、苦くて苦くて結局誰もまともに食べる者はいませんでした。
出典(株式会社 日本翻訳センター URL:http://www.jtc.co.jp URL:http://www.hotsuma.gr.jp)
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